辨 |
ニワウルシ属(シンジュ属) Ailanthus(臭椿 chòuchūn 屬)には、熱帯&亜熱帯アジア・オーストラリア北部に5-6種がある。
ニワウルシ A. altissima(臭椿・樗木)
タイワンニワウルシ var. tanakae(臺灣臭椿) 臺灣産
var. sutchuenensis(大果臭椿) 江西・兩湖・廣西・四川・雲南産
A. fordii(常綠臭椿) 廣東・雲南産
A. giraldii(毛臭椿) 陝甘・四川・雲南産
A. integrifolia(A. moluccana) 廣西・東ヒマラヤ・マレシア・ニューギニア・濠洲東北部産
A. triphysa(嶺南臭椿) 福建・兩廣・雲南・インドシナ・インド・マレシア・濠洲東北部産
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ニガキ科 Simaroubaceae(苦木 kŭmù 科)については、ニガキ科を見よ。 |
訓 |
「和名神樹ハ Tree of Heaven ナル西洋ノ俗名ヲ譯セシモノニシテ、此樹ニ對シ我邦ニテ最初ニ名ケシ名稱ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
椿の字をツバキにあてるのは日本のみ(一説に椿は国字という)。
漢語では椿(チン,chūn)は、センダン科の落葉高木チャンチン Toona sinensis(香椿・椿・紅椿・椿樹・春芽樹)や、本種などを指す。 |
漢名を樗(チョ,chū)というものは、ニワウルシ、またはセンダン。
『本草綱目』に、「香ばしき者を椿(チン,chūn)と名づけ、臭き者を樗(チョ,chū)と名づく」と。
『倭名類聚抄』樗に、「和名本草云、沼天」と
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属名 Ailanthus は、モルッカシンジュ A. moluccana の現地名アイラント(「天の木、天に届く高木」)から。
英名 Tree of Heaven、独名 Goetterbaum は、これを「神の木」と誤解したもの。和名シンジュ(神樹)は、その訳。 |
説 |
遼寧・華北・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南に分布。中国各地で街路樹などとして植える。
日本には明治10年頃渡来。
雌雄異株。 |
誌 |
材は車両を作るなどに用い、樹皮からはカテキュー catechu を作り、種子からは油を採る。
樹皮(椿白皮・樗皮)・根皮(椿根皮・樗根皮)・果実(鳳眼草)は薬用にする。『全國中草藥匯編』上 p.711、『中薬志Ⅲ』pp.459-463 『(修訂) 中葯志』V/515-520 |
『詩経』国風・豳風「七月」に、「九月は苴(しょ。アサの実)を叔(ひろ)ひ、荼(と。ニガナ)を采(と)り樗(ちょ)を薪にし、我が農夫を食(やしな)ふ」と。
「樗」は身近に植えられたが、さして役に立たないので「悪木」とされ、のちには「樗材」とは無用の材を意味し、「樗村」とは荒れ果てた村を意味した。 |